みなさんこんにちは!
モンテッソーリ教師のさちこです。
モンテッソーリ教育について興味を持っている方、子どもにモンテッソーリ教育を受けさせたいと考えている方とお話をしているとよく聞かれることがあります。それは、「モンテッソーリ教育ってわがままになるって聞くけど、実際どうなの?」ということです。
これはおそらく、モンテッソーリ教育の「自主性を重んじる」という特徴からきているもので、自主性=自分の思うままに行動する=わがままという風に連想されているのではないかと思います。
モンテッソーリ教師をしている私としてはそんなことはない!と言いきりたいところですが、実際、モンテッソーリ教育を受けてわがままな子に育ってしまう可能性はあります。
では、モンテッソーリ教育を受けてわがままになってしまう理由は何なのでしょうか。今回はその原因とあわせて、解決策についても解説していきます。
モンテッソーリ教育を受けるとわがままな子に育つの?
モンテッソーリ教育でわがままになるのはどうして?
モンテッソーリ教育とは
そもそもモンテッソーリ教育とは、どんなものかご存じでしょうか。
モンテッソーリ教育はイタリアで初めての女性医師(精神科医)となったマリア・モンテッソーリが提唱した教育法です。子どもたちは何もできない無力な存在ではなく、自分で成長していく力を持っており、未知なる可能性を秘めた存在であるという考え方を基本としています。
医師であり、文化人類学者でもあったマリア・モンテッソーリは子どもの心と体がどのように発達していくのかを深く理解しており、子どもたちの発達状況に合わせた関わりや、道具の提供が不可欠だと考えていました。
最初にモンテッソーリ教育の学校が開かれたのは1907年のことでしたが、当時、子どもは空っぽのバケツのようなものだと考えられており、親や教師が中身を詰め込まなければならないという教育観が当たり前の時代でした。
そんな中で、マリア・モンテッソーリの子どもたちは何もできない無力な存在ではなく、自分で成長していく力を持っており、未知なる可能性を秘めた存在であるという子ども観はとても斬新で、教育界に大きな影響を与えました。
生涯にわたる教育への貢献が評価され、ノーベル賞に3度もノミネートされています。
↓ こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
モンテッソーリ教育とは?【国際協会認定教師が解説】モンテッソーリ教育でわがままになる理由
それでは、本題に戻って、モンテッソーリ教育を受けるとわがままになるのかについて考えていきましょう。
モンテッソーリ教育でわがままになる理由、それはモンテッソーリ教育を正しく実践できていないということに尽きます。
モンテッソーリ教育を正しく実践できていた場合にわがままな子供に育ってしまうということはありえません。
なぜならモンテッソーリ教育は、第一次世界大戦、第二次世界対戦という厳しい2つの戦争の時代を生きたマリア・モンテッソーリが世界平和を願って考案した平和教育でもあるからです。平和教育であるからこそ、他者への配慮や他人との協調ということをとても大切にしています。
マリア・モンテッソーリは「平和は子どもからはじまる」と考えていました。様々な偏見や先入観をもち、私利私欲にまみれた大人だけで世界の調和を達成することはほとんど不可能ですが、真っ白なスポンジのような吸収精神をもつ子どもたちから始めることで世界平和の問題を解決できると考えていたのです。
モンテッソーリ教育が、「わがまま」あるいは「自己中心的な考え方」とは正反対の理念を持った教育であることはおわかりいただけたかもしれません。
ここで、注意しなければならないのは、モンテッソーリ教育が正しく実践されていない場合にはわがままになってしまう可能性があるということです。
モンテッソーリ教育を正しく実践できていない場合
ではモンテッソーリ教育が正しく実践できていない場合というのはどういった場合なのでしょうか
①自由と放任を勘違いしている
まずモンテッソーリ教育では自由子供に最大限の自由を与えるということが大切にされています。
しかしこの自由を勘違いして子どもの思うようにさせてしまう放任になってしまっている場合があります。
モンテッソーリ教育の環境では自由とともに制限というのが設けられています。
どこのクラスでも必ず共通の決まりとして掲げられている三つのルールをご紹介します。
②モンテッソーリ教育大受験のための教育として扱っている
モンテッソーリ教育はGAFAの創業者や藤井棋士の活躍でとても広く知られることとなりました。そのため天才を育てる教育と勘違いされることも多く受験対策のためにモンテッソーリ教育を看板にしている幼児教室がたくさんあります。
受験対策のためにモンテッソーリ教育を行っているようなところでは教具と呼ばれるモンテッソーリ教育独特の道具を使った活動がメインとなっており、モンテッソーリ教育のいちばん大切な平和教育の部分には目が向けられていません。
モンテッソーリ教育が正しく実践されている園などの場合、子ども達はクラスメイトのためにおやつの準備をしたり机や椅子の移動を手伝ったり、花を生けたり動植物のお世話をしたりといった周りの環境や人に配慮した生活を送っています。
しかしお受験を目的とした1日1時間や2時間のモンテッソーリ教育ではただ教具を使って活動をするということだけになってしまうため他人との協調協力をする機会はありません。
モンテッソーリ教育を正しく実践する方法
正しくモンテッソーリ教育を実践する方法の一つ目は何と言ってもモンテッソーリ教育について学ぶということです。
自分で学ぶということももちろん大切ですがエンヤ教室を選ぶ際にしっかりと見極めるということが大切になってきます
- モンテッソーリ活動の時間が2~3時間以上あるか
- 国際モンテッソーリ協会認定の教師がいるか
- クラスは縦割りで運営されているか
モンテッソーリ活動の時間が2~3時間以上あるか
モンテッソーリ教育をやっていますと掲げている園でもただ教具を置いているだけというところもたくさんありますまたほんの30分や1時間といった活動しか行なっていないところもたくさんあります。
国際的な基準でも3時間以上というのがモンテッソーリ活動に必要な時間と言われています幼稚園などの場合預かりの時間的にも難しい面はあると思うのでせめて2時間以上モンテッソーリ活動を行っているところを見つけてください。
国際モンテッソーリ協会認定の教師がいるか
国際モンテッソーリ協会というのはオランダに本部があるマリアモンテッソーリの息子マリオモンテッソーリが設立した協会です。
この国際協会の認定教師になるためには1年間あるいは2年間の講習研修を受けることが必須となっており受講料は100万円かかります。
近頃では日本独自のモンテッソーリ教育教師養成プログラムを終了した先生もモンテッソーリ教師として活躍されていることがありますし、その先生方の知識が足りないというわけではありません。
ただやはり、国際モンテッソーリ協会教師養成プログラムとその他のものては、質、量共に全く異なります。
やはり国際モンテッソーリ協会認定の教師がいるということは一つの基準として信頼できるものだと思います。
クラスは縦割りで運営されているか
縦割りクラスであるということはモンテッソーリ教育の基本です。
実は日本の保育制度では縦割りクラスというものは認められていません。
しかし、モンテッソーリ教育をきちんと行なっている園では年齢別にクラスの設定はあっても、実際のところ縦割りとして活動しています。
異年齢教育とも言われますが、上の子を見て下の子は育ち、下の子に教えることで上の子はさらに育つ。そうして子ども同士で学びあっていく環境をモンテッソーリ教育では大切にしています。
もし私が園や教室を選ぶとしたら絶対にチェックする視点もプラスアルファでご紹介しておきます!
- 園長や理事長など経営陣のトップがモンテッソーリ教育に対する理解があるか
- スタッフ全員にモンテッソーリ教育の大切さや方針が共有されているか
- 行事があまりにも多すぎないか
よくある失敗例
① 自由を尊重して、子どものしたいようにさせてわがままになる
モンテッソーリ教育は、子どもの自由を尊重する教育だから、何でもしたいようにさせて、わがままになってしまうといわれることがあります。
確かに、自由を尊重する教育であることは間違いありません。
しかし、モンテッソーリ教育では、従来の教育のように親や大人が何かをやりなさいと押し付けるのではなく、子どもたちの興味・関心を尊重して、最大限の自由を提供することを大切にしています。
モンテッソーリ教育における自由は常に制限がセットであるものです。
モンテッソーリ教師は子どもに最大限の自由を提供する一方で、きちんとした制限をかける方法を教師養成コースで学んでいます。
ただ子どもに好き放題させて甘やかす「自由」とは全く異なるものです。
それではここから、モンテッソーリ教育における明確な、そして厳格なルールの下で成り立つ自由についてお話していきます。
モンテッソーリ教育の環境では
私たちは、自分、他人、教具、環境を尊重し配慮できている場合においては、なんでもできる。
というのがひとつのルールとして共有されています。
具体的には以下のようなことです。
- 自分:怪我をしてしまうようなことではないか
- 他人:傷つけてしまうことや嫌がることではないか
- 教具:正しい使い方か、壊してしまう心配はないか
- 環境:危険でないか、その場にふさわしい振る舞いか
このルールは不変の真理として一貫して守られるものであるため、子どもたちは日々自由の範囲でできることとできないこと(してはいけないこと)を学び、次第に自分の自由の範囲を理解していきます。
② ひとり活動ばかりしているので、社会性が育たない
次に、ひとり活動ばかりしているので、社会性が育たないといわれることもあります。
教具と呼ばれるモンテッソーリ教育ならではの道具を使った活動は「おしごと」と呼ばれますが、子どもたち一人一人が集中してお仕事をしているときはクラス全体がシーンと静まり返っています。
この場面だけ切り取って見ると、一般的に想像する、他の子と追いかけっこをしたり、おもちゃの取り合いをしたりといった子どもの姿とはかけ離れていて、社会性が育たないように思えるかもしれません。
確かに、おもちゃの取り合いをしたり他の子と喧嘩をしたりすることで社会性が育つ側面もありますが、モンテッソーリ教育の環境では、先ほど説明した明確なルールを設定することで子どもの社会性を育んでいます。
例えば、自分が使いたい教具があっても他の子が使っているときには順番を待たなければいけません。「かーしーてー!」と他の友だちの集中を妨げたり、力づくで奪ったりすることはルール違反です。
逆に自分が使っているときには、待ってもらう権利があるということも学んでいきます。
大人の場合で考えてみても、例えば絵を描いている最中に「その道具貸して!」とか、「交代して!」と言われたらどうでしょうか。「今すごく集中して描いているのに」とか「私が描き終わるまで待ってほしい」と思いませんか?
ましてや、力ずくで奪われるなんてことがあったらこんな人とは付き合っていけないと思うほどではないでしょうか。
「子どもだからものを取り合うのが当たり前」ではありません。
明確なルールを示し、それを環境の中で徹底することによって、順番を待つことや、他人との上手な付き合い方を学ぶことができます。
まとめ
マリア・モンテッソーリは
「自由と制限はコインの裏表である」
と述べています。つまり、モンテッソーリ教育における自由には必ず制限(ルール)が伴うということです。
モンテッソーリ教育で育った子どもたちは、自分に自由が認められるからこそ、
「自分に自由があるのと同様に、周りの人たちにも自由がある」
という認識を持つことができ、他者を思いやることができるようになります。
↓ モンテッソーリ教育関連の書籍は古かったり、読みにくかったりするものが多いのですが、以下の本はわかりやすく、体系的にまとめられているのでおすすめです。
↓ いのちのひみつはモンテッソーリ教師なら必読と言われているものですが、とても読みやすいのでモンテッソーリについて知りたいという友だちがいたらいつもおすすめする1冊です。
それでは今回はこのへんで!
最後まで読んでいただきありがとうございました。