共生期間という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
モンテッソーリ教育では、生まれてから最初の8週間を共生期間(symbiosis)と呼んでおり、お母さんと赤ちゃんが支え合って一緒に過ごしながら環境の変化に適応していく時期と定義づけられています。
赤ちゃんが生まれてから最初の8週間、お母さんは出産後の心と体の変化に適応するために、そして赤ちゃんは誕生後の世界に適応するためにお互いを必要としています。
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共生期間にお互いに与えあう影響

8週間の共生期間中、赤ちゃんとお母さんはお互いにどんな影響を与え合うのでしょうか。
赤ちゃんがお母さんに与える影響
- 身体が元に戻るのを助ける
通常時、子宮はこぶしと同じくらいの大きさといわれていますが、出産後は大きく広がっています。
赤ちゃんに乳房を吸ってもらうと子宮を収縮させるホルモンが分泌され、産後に広がった子宮が元に戻るのを助けてくれます。
- 喪失感を和らげる
妊娠中の約10か月間、おなかで赤ちゃんを育んできたお母さんは出産後、おなかの中から急に赤ちゃんがいなくなった喪失感を感じることがあります。
しかし、共生期間の間、常に一緒に過ごすことでその心理的なダメージを埋めることができます。
お母さんが赤ちゃんに与える影響
- 特別な食べ物(母乳)を与える
どんなに研究開発が進んでも、母乳とまったく同じ成分の粉ミルクは作ることができないといわれていわれるほど、母乳は特別な栄養源です。
母乳は消化器官が未熟な赤ちゃんでも消化がしやすい上、母乳を通して母親が持っている免疫も獲得することができます。また、母乳に含まれるタンパク質は、神経系のミエリン化を促進する働きがあるため、赤ちゃんの運動発達をサポートしてくれるのです。
- 新しい世界のガイドになる
赤ちゃんが約10か月間過ごしていた胎内と、生まれてからの世界は全く異なるものです。そのため、共生期間中お母さんはこの世界のガイド役となって赤ちゃんが新しい環境に適応していくのをサポートします。
10か月間一緒に過ごした、信頼できるお母さんに抱っこしてもらったり、話しかけてもらったり、愛情をもってお世話をされたりすることで、「この世界も居心地がいいな」と感じることができ、新しい世界へ適応していくことができます。
また、私たちが生きる世界では他者と共存していくことが必要不可欠で、共生期間に築くお母さんとの関係は、今後の人生においての人間関係の基盤を作るものとなります。
もしこの期間にお母さんとの愛着関係が築けなかった場合、他人はもちろん、自分のことも信じることができず、一生涯にわたって人間関係構築においての困難さが残ってしまう可能性もあります。
- 安心感を得る
赤ちゃんはお母さんに抱っこしてもらうことで、胎内で聞いていた心音や声、匂い、ぬくもりを感じることができます。そしてこれらは、まったく新しい未知の世界で生活する赤ちゃんにとってのよりどころとなり安心感を与えてくれるものです。
生まれたばかりの赤ちゃんは自分では移動できないため、授乳、おむつ替え、着替え、お風呂など、お世話をされるときは必ず大人に抱っこされることになるわけですが、このときの肌と肌とのふれあいもまた、心のよりどころとなり、赤ちゃんに安心感を与えてくれます。
共生期間の環境づくり
- 赤ちゃんのための環境
静けさを保ち、明るい光を避け、薄暗くて温かい環境を作ることが重要です。
赤ちゃんは体温調節機能が未発達なため、部屋の温度を適切に保ち重ねて着をせてあげましょうというのはよく言われることですし、赤ちゃんがいる環境で大騒ぎをする人も少ないかと思いますが、意外と意識されていないのが部屋の明るさです。
10カ月もの間、薄暗い胎内で過ごした赤ちゃんにとって、私たちが普段使っている蛍光灯などの明るい光は大変刺激が強いもので、目を針で刺されるような痛みが伴うといわれています。
自然光は基本的には良いものですが、日差しが強い日にはレースのカーテン使う、できるだけ蛍光灯や白色電球ではなく間接照明を使うといった空間づくりが必要です。
また、0歳のお部屋づくりの記事でもお伝えしましたが、環境に秩序があることも重要です。
秩序感のある環境で、いつも決まった場所で、特定の活動をすることができれば、赤ちゃんは次に何が起こるかを予測することができっるため、安心感へとつながります。
これによって、環境に対する基本的な信頼感が赤ちゃんの中で育まれ、これを土台として、自分に対する基本的信頼感の獲得へと繋がっていきます。
- お母さんのための環境
赤ちゃんが生まれてから最初の8週間はお母さんの体を回復させる期間でもあります。
産後の身体は交通事故に合ったのと同じくらいのダメージを受けているといわれます。
https://www.at-s.com/news/article/national/1206042.html
出産後は早めに家庭に戻り、慣れた環境で過ごすのが良い。
家庭では家事や身の回りの世話をしてくれる人がいることが理想的であり、お母さんは赤ちゃんだけに集中して一緒に過ごし、授乳以外はすべて(おむつ交換でさえも)誰かに頼るのが良い。
周りの人との愛着関係
共生期間は世界(周りの環境)への愛着を育む期間でもあります。
まずはお母さんと1対1の愛着関係を築くことで、他の家族のメンバーやその他の周りの人との愛着関係も築いていくことができます。父親や祖父母、兄弟などの家族、定期的な訪問者など、たくさんの人と健康な関係性を構築することが望ましい。
共生期間中の父親の役割

この期間中、パートナーは子どもの生活の一部となり、母子にとって役立つような特別なつながりを持たなければならない。
- 母子の愛着を守る
なるべく家族以外の人と会うことを減らし、母親と子どもの大切な時間を守っていく。
- 母親の精神状態を理解する
- 赤ちゃんと特別な関係を持つ
赤ちゃんに対してどう振舞っていくか。(おむつ替え、顔を見て話す、沐浴など)産まれた後の拠り所となるよう、胎児期から声を聞かせる。たくさん話しかける。
- 2人以上の子どもがいる場合、兄弟児の精神面を支え、世話をする
