【育児で役立つ!】モンテッソーリ教育の考え方

近年テレビやYouTubeなど様々なメディアで取り上げられており、棋士の藤井聡太さんの活躍でも注目を集めるようになったモンテッソーリ教育。

みなさんは、モンテッソーリ教育に対してどんなイメージをお持ちでしょうか。

  • 頭がいい子に育ちそう
  • お金がかかりそう
  • なんだか宗教みたいで怖い

ネガティブなものもあればポジティブなものもあると思います。

また、なんとなく、ふんわりしたイメージしかない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、モンテッソーリ教育ってよく聞くけど、結局なんなの?という方のために、その基本的な考え方をわかりやすく解説していきます。

知育ではない

まず初めにお伝えしたいのは、モンテッソーリ教育は「頭を良くする」とか「人生で成功する」といったものではありません。

よく誤解されていますが、知的能力に特化したものでもありません

マリア・モンテッソーリは知識偏重の教育に対して以下のように述べています。

教育は人間のレベルを高める一法として認められてはいますが、子どもの改革的建設的力を引き出そうとせずに依然として古い考えに基づいて、ただ頭の教育であると考えられているのです。

E.M.スタンディング
『モンテソーリの発見』

確かにAmazon、Google、Wikipediaといった有名企業の創業者が受けていた教育ということで注目されていますが、起業家を育てるための特別なプログラムでもなければ、天才を育てる特別な教育でもないのです。

どちらかと言えば、モンテッソーリ教育の学校は宿題もない、成績表もないような自由な雰囲気で、受験戦争が過熱している日本社会からは考えられないようなシステムになっています。

ちなみに・・・

日本では幼稚園や保育園で取り入れられていることが多いため「モンテッソーリ教育=幼児教育」と認識されがちですが、本来は0歳から24歳までの包括的な教育メソッドです。

宿題も成績表もないような教育システムでは、子どもたちは怠けてしまい、勉強しなくなって、良い職業に就けないと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、モンテッソーリ教育を受けた人が各方面で活躍していることは紛れもない事実です。

モンテッソーリ教育を受けた人

Googleの創業者セルゲイ・ブリン氏は、共同創業者であるラリー・ペイジ氏との共通点にモンテッソーリ教育を挙げ、以下のように語っています。

We both went to Montessori school, and I think it was part of that training of not following rules and orders, and being self-motivated, questioning what’s going on in the world, doing things a little bit differently.

The Montessori Mafia – WSJ

(意訳)「僕らはふたりともモンテッソーリ教育の学校に通っていたんだ。そしてそれは、ルールや命令に従わずに自発的に行動し、世界で何が起こっているのかを疑問視し、少し違ったやり方をする、ということのトレーニングの一環だったと思う。」

セルゲイ・ブリン氏は、モンテッソーリ教育が既存のルールや常識にとらわれないためのトレーニングだったと振り返っているわけですが、既存のルールや常識にとらわれていては新しいものを生み出すことはできないということは、現代社会においては多くの人が感じていることではないかと思います。

また、Self-motivated(自発的・内発的動機)という言葉が使われていることからもわかるように、モンテッソーリ教育では、それぞれの興味や関心に基づいた活動を行います。

これは、全員が同じ知識を同じように学ぶことが推奨されている一般的な教育システムとは大きく異なるものです。

モンテッソーリ教育では、子どもたちがひとりひとり全く異なる存在であるという前提条件のもと、子どもたちそれぞれを尊重することを大切にしています。

モンテッソーリ教育のポイント
  • 知的能力に固執しない
  • 興味がある分野を伸ばす
  • 大人の考えを押し付けない
  • 子どもを尊重する

子どもを尊重する

子どもを尊重するというのは具体的に以下のようなことです。

  • 自分でできるようにサポートする
  • こどもに対して敬意を払う
  • こどもの意思を大切にする

ひとつずつ詳しく解説していきます。

自分でできるようにサポートする

モンテッソーリ教育の入門書『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!という本のタイトルにもある通り、「子どもがひとりでできるようにサポートする」ことがモンテッソーリ教育の基本のキといえます。

たとえば、靴を履くということを考えてみましょう。

一般的に、3歳ぐらいまでのお子さんであれば親が履かせてあげるケースが多いかと思います。

しかし、いつも靴を履かせてもらっていては、いつまでたっても自分で履けるようにはなりませんよね。

もちろんお父さん、お母さんも急いでいて仕方ない場合もあるのですが、できる限り自分で履く機会を作ってあげることが大切です。

モンテッソーリ教育では最初から子どもがひとりで靴を履けるようになるというゴールに向かって進んでいきます。

最初は大人がほとんど全てサポートする状態ですが、徐々に大人が手を出す工程を減らしていきます。

そしてもう一つのポイントは、子どもが自分で靴を履けるような環境をつくってあげることです。

環境の例

腰掛けるベンチ

履きやすい靴

出し入れしやすい靴箱

必要な物・環境をそろえたら、子どもができるようになるまで、必要最小限のサポートをしていきます。

こどもに敬意を払う

次に、子どもに敬意を払うことも、子どもを尊重することに含まれます。

大人に対しては失礼だと思うことでも、子どもには平気でしてしまうことはないでしょうか。

例えば、子どもが「ここに行きたい」「これをしたい」といった場合に、「だめだめ」「はいはい、今度ね」と軽くあしらうようなことです。

何かお願いされても事情があってできないという場合は当然あるのですが、その場合でも大人は「○○がしたいんだよね。でもそれはできないんだよ。ごめんね。」といったふうに気持ちを受け止め、きちんと対応するべきです。

普段、大人とコミュニケーションをとるときに「相手は○○したいといっている。でも自分はしたくない。」という状況になった場合を考えてみましょう。

皆さんはどのように対応しているでしょうか。

相手の気持ちを考えながら、言い回しを考えたり、代替案を出したり、時には自分が妥協したり、あらゆる配慮をしているのではないでしょうか。

これを同じように子どもにもしてあげましょう。

そうすることで、自分の意見はしっかり聞いてもらえる、重要なものであるという認識を育てることになり、自己肯定感の獲得に繋がります。

高圧的な親

また「○○はだめ!こうしなさい」と命令したり「早くしなさい!こっちに行くよ!」と強制したりすることも、子どもに対する敬意を欠いた大人の対応です。

大人に対しては命令したり強制したりすると「パワハラだ」「高圧的な人だ」と批判されますが、子どもに対しては命令することも強制することも当たり前のようになっていないでしょうか。

子どもはこの世界の新入社員のような存在です。

バイトでも、会社勤めでも、みなさんが新人だったころを思い出してみてください。

自分なりの考えがあって取った行動を頭ごなしに否定されたり、高圧的に命令や強制ばかりされたりするのは、誰にとっても不快なものだと思います。

これは子どもにとっても同じことです。

子どもを意思を持った個人として尊重し、子ども扱いしないということがとても重要です。

子どもの意思を大切にする

先述のこどもに敬意を払うにも重なる部分がありますが、子どもの意思を大切にすることも子どもを尊重することに含まれます。

特に、モンテッソーリ教育では、「自分で選択する」ということを大切にしています。

  • 麦茶を飲む?お水を飲む?
  • 赤と青、どっちのTシャツにする?

内容は何でも構いません。とにかく自分で選択させる。こうすることで、自分で考える力がつきます。

就職活動や進路相談の場面で、「自分が何をしたいかわからない」という悩みをよく聞きますが、これは、幼少期にいつも与えられた課題を淡々とこなし、先生や周りの大人の指示に従ってきたために「自分の考え」をもつ機会がなかった結果ではないでしょうか。

変化の激しいこれからの時代、「みんなと同じ」では評価されません。

子どもの意思を大切にし、選択の機会をたくさん与えて自己肯定感を育てることは、とても重要です。

モンテッソーリ教育のポイント
  • 大人のサポートは最小限にする
  • 子どもがひとりでできるように手伝う
  • 最適な環境をつくる
  • 子ども扱いしない
  • 自分で選択する機会を与える

子どもを見る目を鍛える

また、モンテッソーリ教育では大人の見る目を養うことが必要不可欠であるとされています。

基本的な発達を理解する

まずは子どもの基本的な発達を理解しましょう。

脳や神経、視覚や触覚がいつぐらいの時期に、どのように発達していくのかを知っていれば、発達に合わせた対応ができます。

赤ちゃんの発達については様々な書籍がありますが、ダフニ・マウラ著『赤ちゃんには世界がどう見えるか』はとてもおすすめの1冊です。

日本では1992年に発行された古い本ですが、1歳ごろまでの赤ちゃんがどのように世界を捉えているのかについて様々な実験結果をもとに書かれています。

こどもの特性を理解する

また、子どもの基本的な発達を理解した上で心掛けたいのは、対象の子ども特有の性質を理解していくことです。

耳を触ったら眠たいサインだとか、トイレに行きたいときはこんな顔をするといったように、子どもを日々観察する中で、特性を理解していきましょう。

そうすることにより、大人側にも余裕が生まれ、子どもが必要としているときに適切なサポートができるようになります。

ちなみに・・・

モンテッソーリ教師養成コースでは250時間の観察実習があり、何よりもまず子どもを観察することが大切であると指導されます。

モンテッソーリ教育のポイント
  • 子どもの基本的な発達を理解する
  • 子どもを観察する
  • ひとりひとりの特性を知る

モンテッソーリ教育はおうちでもできる

ここまでモンテッソーリ教育の基本的な考え方をお伝えしてきました。

モンテッソーリ教育のポイント
  • 大人のサポートは最小限にする
  • 子どもがひとりでできるように手伝う
  • 最適な環境をつくる
  • 子ども扱いしない
  • 自分で選択する機会を与える
  • 子どもの基本的な発達を理解する
  • 子どもを観察する
  • ひとりひとりの特性を知る
  • 知的能力に固執しない
  • 興味がある分野を伸ばす
  • 大人の考えを押し付けない
  • 子どもを尊重する

「子どもにモンテッソーリ教育を受けさせたいけど園や教室に通わせることができない」という場合でも、お母さん、お父さんがモンテッソーリ教育のポイントを知り、日々の生活で実践できれば、それはもう、立派なモンテッソーリ教育です。

みんなのモンテッソーリでは、これからもモンテッソーリ教育についての様々な理論や実践方法を解説していきます。

皆さんにとってモンテッソーリ教育がもっと身近なものになりますように。