発達の4段階 ~第3段階~ 【12歳から18歳まで】

発達の第3段階の特徴

この時期の特徴として一番に挙げられるのがホルモンの変化です。

男子は声変わりをしたり、ひげが生え始めたりするようになり、女子は初潮を迎えたり胸のふくらみを経験したりするようになります。自分の体がどんどん変化していくことに不安をもち、アイデンティティクライシス(自己認識の危機)に陥る時期でもあります。

ホルモンバランスの変化

ホルモンはわずかな変化でも心理的・身体的に影響が大きいものですが、この時期の子どもたちはかなり大きなホルモンの変化を経験しているため、精神的に不安定になりやすい傾向があります。

そのため、よく睡眠をとり、健康的な食事を心がけることが必要不可欠なのですが、親や先生が「早く寝なさい」「好き嫌いせず食べなさい」といっても素直に聞き入れて実行できるわけではありません。

親には反発しても、スポーツクラブのコーチの言うことは聞くといった場合もあるので、大人が子どもの様子をしっかり様子を観察して工夫して接する必要があります。

オーバーワークな日本の中高生

また、他の国々と比較してみると、日本の子どもたちは受験勉強や部活、宿題や補講で疲弊していて、かなりオーバーワークになっているといわれています。
私たち大人はこの年代の子どもたちが過酷な環境に置かれているということを理解し、「勉強しなさい」「部屋を片付けなさい」とタスクを増やすばかりではなく、子どもの話に耳を傾け、特に家庭内ではリラックスできる環境を提供してあげるべきでしょう。

『最高の睡眠』でおなじみの西野精治先生が最高研究顧問を務める株式会社ブレインスリープの調査によると

日本の子どもたちは睡眠時間が短い上、その自覚もないということが明らかになっています。

子どもから大人へと変化する

また、第3段階前半は「なぜ生きるのか」「私はどんな存在か」「自分が社会のどこに属しているのか」について考え始め、友人関係や家族関係においての自分の立ち位置について考えるようになります。

クルト・レヴィンがこの時期の若者を「マージナルマン(境界人)」と定義したことは有名ですが、マリア・モンテッソーリは第3段階(12歳から18歳)の子どもたちを「社会的新生児」と呼びました。

これは新生児が胎児から子どもへと変化していくのと同じように、子どもが身体的にも精神的にも大人へと変化していくことを表現しています。

アイデンティティの獲得

また、第3段階は性的なアイデンティティを受け入れるかどうかを考える時期であり、ジェンダーについてとても敏感になります。

そのため、性教育を行うのにはとても適した時期で、安心感のある環境のもとで親、教師あるいは専門職の講師などが性教育をしてあげることが推奨されます。

保護者の方で子どもに直接話すのは抵抗感があるという場合はさりげなく本をプレゼントするのもおすすめの方法です。

個人的おすすめはテンガヘルスケアが運営するサイト「セイシル」を書籍化したこちらの一冊。

なんといっても性教育本とはおもえないほどイラストが可愛らしくて、中高生のリアルな悩みにQ&Aで答えていく形式なので、サクサク読み進められます。

感情の暴走

この時期のもうひとつの特徴として、感情が先走りやすいということが挙げられます。

第2段階では冷静に話し合いができたことでも、第3段階になると感情が邪魔をしてしまい、暴言を吐いたり、論理性を失ったりする傾向が見られます。

これは、更年期のようにホルモンバランスが崩れていることが原因であるため、子どもの性格が悪いとか、育て方を間違えたということではありません。

あらかじめルールや規範を提示しておくと感情の暴走を抑えられる場合があります。門限や家事の当番などを家庭の中で決めておくこともおすすめです。

社会的アイデンティティの探求

第3段階では、社会と関わることへの関心が芽生えてきます。

所属するグループに受け入れられたいという思いがあるため、髪型や身だしなみにも敏感になり、

髪型が決まらないと学校に行きたくない

長いスカートはダサいからいやだ

などと見た目にこだわったり、派手な髪形や服装をするようになったりするのもこの時期の特徴として挙げられます。

また、ひとりの人間である自分をみつめる時期であるため、心理的に家族と離れたいという気持ちを持つようになったり

早くひとり暮らしをしたい

自分ひとりで生きてみたい

という欲求が沸き上がったりすることもあります。

昔は元服と言って15歳で成人だったことも考慮するとこの気持ちの変化は自然なことであるともいえます。この変化を大人が理解し、独り立ちをしたい気持ちを応援し、無理のない範囲でサポートすることが重要です。

このときに親が子離れできず引き戻そうとすると強い反発が起こってしまいます。これがいわゆる反抗期で、親にとっても本人にとっても非常に難しい時期であるといえます。

社会的新生児と呼ばれていることからもわかるように、0~3歳と同様、自意識過剰で自分のことばかり考えている第3段階の子どもたちには、すべてダメダメと言わず大切なことを取捨選択できるよう道を示してあげる一方、親として一貫したポリシーを持っておくことが必要でしょう。

勉強への興味の減少

自分の関心にピッタリ合致するものがあれば興味を持つこともありますが、小学校の時のように本能的に何かに興味関心を持つことは少なくなります。

アカデミックなことへの興味が薄れ、「何のために学ぶのか」といった疑問を持つようになるのが第3段階の特徴です。

弱点の内省

第3段階の後半、つまり15歳から18歳ごろになると、徐々に自分の弱点を客観的に見つめられるようになっていきます。

自分の良くない部分や弱点を見つけた場合、意図的に直していこうとするため、親は「ここを直しなさい」「そんなことはしないで」などとうるさく口出しするより、子どもが自分で気づいて改善できるようサポートしていくことが重要です。

第3段階のモンテッソーリ環境

アードキンダー (農場兼学校)

アードキンダーとは寄宿舎制の農業学校のような場所です。

日本ではアードキンダーとして開校されている学校はまだありませんが、多くの学校で、「自然教室」や「宿泊体験」といった形で実施されるものをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。

モンテッソーリはこの時期の子どもたちにとってアードキンダーは理想的な環境のひとつであるといいました。

土に触れることで子どもたちが落ち着き、まさに地に足のついた状態になっていきます。また、思春期においては自分探しの活動が活発になるため、家を離れ学校の中で社会生活を送ることで答えを見つけやすくなることも大きなメリットのひとつです。

親に促されるのではなく自分たちで食事の準備をし、掃除や洗濯など役割分担をして生活を営むことで、社会性を身に着け、生きる上で必要なことを学んでいくことができます。

アードキンダーは、中学、高校が別々になっている学校もありますが、多くの場合中高一貫で6年間通います。農場が併設されているため、田舎に設立されている学校が多い一方、最近では都会の中心地に位置する学校も増えてきました。

プロジェクトなどのリサーチのためにインターネット環境はありますが、多くのアードキンダーにおいてメディアデバイスの個人的な使用が禁止されているのも特徴のひとつです。

ハウスペアレンツ

親の代わりとなるような男女のペアで、寄宿舎制のボーディングスクール等でも同様に配置されています。

教員免許などの特別な資格は必要なく、人間的に明るく、子どもたちの生活の支援ができる人物が選ばれます。

農業や養鶏の専門家

アードキンダーでは農業や陶芸、美術や芸術など、その道のプロを招待し、専門分野のこといついて教えてもらうことがよくあります。近隣の農家さんや職人さんと繋がりを持つことで社会の一員としての意識が芽生えます。

もちろん、学校の先生も専門性があるのが好ましいのですが、何かの専門家というよりはコーディネーターとして様々な専門家を呼び、プログラムを作成できる能力のほうが求められます。

農場 Farm

自然科学について座学もあるが、基本的には自分たちの農場を舞台に実際に取り組みながら学んでいきます。肥料の種類や量を変えて植物への影響を観察したり、自然環境や気候の変化がどういった影響を及ぼすのかを観察したり、実体験を通して理解を深めることができます。毎日が理科の実験といった感じですね。

野菜や果物を育てて自給自足することはもちろん、養蜂やメープルシロップづくり、農具の作成、オーガニックの洗剤やせっけんなど様々なものをつくり、ファーマーズマーケットでの販売も行っている学校もあります。

宿泊施設の運営

アードキンダーでは、生徒がゲストルームを運営していることもあり、親が宿泊できるようになっています。シーツ替えやゲストの食事の準備など様々な仕事を行い、観光業・ホテル業の職場体験のようなものができる仕組みになっています。

実際の生活を通して環境問題について考える

元グリーンピースの校長先生が子どもたちに問題提起してディスカッションをするというように、環境に詳しい、リテラシーの高い大人が主導してエコロジー活動を行っています。

外来種の植物を伐採し、農場の生態系を守ったり、古着から新しい服をつくったり、リサイクル活動を行ったりする中で、環境問題に関心を持つようになった子どもたちは。環境への配慮が少ない企業の商品は買わないというポリシーを表明したり、学校を休んでデモに参加したり署名活動を行ったりすることをごく自然なこととしてとらえています。

自己表現

アードキンダーでは、音楽、ダンス、制作発表など、自分を表現する場がたくさん用意されています。この時期の子どもたちは自己表現の欲求が高いため、場の提供は極めて重要であるといえます。

毎週先生が「お金」「環境」といったテーマを決めて、個人が調べてきたことを発表しディスカッションを行う自由研究活動もプレゼンテーション能力の向上に役立つものです。

仕事

モンテッソーリ小学校のクラスで使う机を中学生が作ってあげたり、自分たちが使う農具や革製品などを作成したり、様々なものづくりを自分たちで行い販売もしています。

教室を掃除してお小遣いをもらったり、教具づくりを支援してバイト料をもらったりと「労働により対価としての報酬を得る」体験がたくさんできるのもアードキンダーの特徴です。

インターンシップ

アードキンダーでは、関係者のネットワークを最大限に活用して、興味があるものに関係するインターンシップを組んでもらうことができます。

例えば、ハーブを育てるのに興味がある子の場合は、ハーブを取り扱っているアロマのお店で働かせてもらうというようなイメージです。

日本の職場体験では提携先も限られており、短時間かつ短期間の義務的なものとなっていますが、アードキンダーでは個人のニーズに合わせて6週間程度の長期プログラムで実施されることが多く、実りある活動となっています。

第3段階でみられる傾向性

探求

第3段階では、共同生活の探求、社会生活の進化の探求、自己の探求やジェンダーの探求といった様々な形の探求が見られます。

秩序

第3段階の前半では特に秩序感を必要としています。

この秩序とは、ルールや明確な基準となるもののことで、友達に嫌われたくないという所属の意識が強い子どもたちにとって助けとなるものです。

例えば、親が一貫した姿勢で門限を設定してあげることで「うちは親が厳しいから帰るね」と言って、友だちとの関係を悪化させることなく遊びを切り上げることができます。「友達に誘われて断れなかった」といった事態に陥りがちな子どもを守ることにもつながります。

コミュニケーション

第3段階の子どもたちは他人とコミュニケーションを取りたい、社会や友だちと繋がりたいという欲求を強く持っています。

この強い欲求はSNS依存やスマホ依存の原因にもなっています。こういった現代ならではの問題にも私たち大人は対処していく必要があります。

推薦図書:『スマホ脳』

大人の役割

  1. 思春期の子どもたちへの共感:共感する姿勢を示してあげる
  2. 人間への尊重:思春期だからという言葉で片づけるのではなく誠実に向き合う
  3. 愛情と受容する心:子どもの選択に対し受容する心と深い愛情をもつ

第3段階の子どもたちは誠実さに敏感な時期であるため、噓をつかない、上辺だけの接し方をしないといったことがとても大切です。

子どものロールモデルとしてルールや規範は示しつつも、子どもが愛情を感じられるように自由とのバランスを取りながら接することが求められます。

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