発達の4段階 ~第2段階~ 【6歳から12歳まで】

発達の第2段階とは

第2の時期は6歳から12歳までです。成長の時期ではありますが、変化はしません。第2の時期には子どもは穏やかで落ち着いていて、精神面からいえば、健康で力強くてしっかりと安定している時期です。

マリア・モンテッソーリ『子どもの精神』

第2段階の身体的特徴

6歳から12歳までの第2段階はとても安定した時期で、病気をすることも少なく、健康的に過ごすことができます。

6歳ごろになると乳歯が永久歯に生え変わりはじめ、筋肉もついて、幼児体型から骨ばった体型へと変化していきます。

第2段階の心理的特徴

第2段階の子どもたちは精神的に落ち着いている傾向があります。他者理解もできるようになり、他人を思いやる心や道徳心が芽生えます。

理由づけする精神

吸収精神の力を使って、すべてを受肉化していた第1段階を経て、第2段階では論理性を求め、「なぜ?」「どうして?」と理由付けや、因果関係の解明をしたがるようになります。

例えば、金魚が死んでしまったとき第1段階の子どもたちは、「動かなくなったよ」と先生に伝え、「金魚は死んでしまった」と教えられ、そうなのかと受け止めるものですが、第2段階になると、エサが足りなかったのか、水がよくなかったのかなど「なぜ死んでしまったのか」について考えるようになる傾向があります。

想像力

第1段階であるがままの現実世界の情報を吸収することができた子どもは、それらの情報をもとに想像するようになります。前出の理由付けする精神も手伝って、「じゃあもしこうだったら…」という想像力が育まれていくのが6歳から12歳の第2段階です。

モンテッソーリ教育とファンタジー

モンテッソーリ園ではキャラクターもののアイテムを使うことが禁じられていることがよくあります。

これは第1段階の子どもたちはファンタジーの情報を取り入れるより先に現実世界のことを学ぶ必要があると考えているためです。現実世界についての知識を土台として想像力が育まれていきます。

アンパンマンの絵本を読むより、写実的なパンの絵本や動植物の図鑑を読んだほうが、現実世界のことを知ることができて良いという考えですね。

道徳心

第2段階になると物事の善悪を理解するようになり、ルール違反やフェアでないことに敏感に反応する傾向が見られます。身の回りの不平等なことはもちろん、世界の貧富の差にも気づき、興味を持つようになる時期です。

内面化された秩序

第1段階の時に見られるような、きれいに折りたたんだり、決まった場所に片付けたりといった外面的な秩序は薄れてくる一方、内面的な秩序が整うのが第2段階です。

小学生くらいの子どもたちは、寝癖がついていたり、シャツがはみ出していたり、部屋が散らかったりしていたりしても平気で、一見だらしなく見えるものですが、頭の中は整理されていて、内面的な秩序がしっかりと育まれています。

文化への興味

地理、生物、芸術など広範囲な意味での文化に興味を持っていくのも第2段階の特徴です。


できるだけ多くのことを学びたいという欲求が出てくるので、博物館や美術館、自然体験活動など様々な経験をさせてあげるベストタイミングといえます。

崇拝・尊敬

アニメのヒーローやかっこいいお兄さん、お姉さんなどに憧れるようになるのも第2段階の子どもたちの特徴です。

憧れたり崇拝したりする心は強いエネルギーを持っているため、例えば、サッカー選手に憧れ、「将来はサッカー選手になりたい!」と思った子は自ら進んでサッカーの練習し、どんどん上達していきます。

無作法

第2段階の子どもたちはまだ、他者の心を理解する能力が発達途上であるため、自意識過剰で失礼な言葉や態度をとる傾向があります。

言わなくてもいいことを相手に言ってしまうこともありますが、そのようなときには、「そんなこと言わなくていい!」と注意するより、その時の状況や気持ちを経験させることが重要です。

友だちや周囲の大人と関わる中で、少しずつ相手を尊重し、上手く関わることができるようになっていきます。

家庭・学校の外へ

家庭や学校といった小さな空間に満足できなくなり、活動の範囲が広がっていくのもこの時期です。自分たちが生活している世界以外のところに興味が出て、見てみたい、行ってみたいという気持ちを持つようになります。

仲間からの承認を求める

第2段階は群集本能やギャングエイジと呼ばれる時期と重なります。

第1段階ではひとり遊びを好む傾向がありますが、第2段階の子どもたちは友だちと遊ぶことやグループで活動することを好むようになります。また、承認欲求の対象が親や先生ではなく友だちへ変わっていくため、友だちからの反応や評価をとても重要視するようになります。

第2段階で見られる傾向性

探究・探索

第1段階から引き続きみられる傾向性です。第2段階になると時間の概念がわかるようになるため、「昔の人は~~」「将来は~~」というように過去や未来についての探求もできるようになります。

秩序

第1段階では外的秩序を必要としていましたが、第2段階では、内面的な秩序を育んでいきます。正義感、平等感が芽生え、ルールに執着し、明確なルールに従うことを好む傾向があります。

コミュニケーション

グループの一因になりたいという思いが強くなり、友だちと行うグループ活動を好むようになる時期です。グループに属したい気持ちと同時に、リーダーシップについて理解し、経験するようにもなります。グループで活動する中で自分たちのコミュニティや独自のルールを作ってコミュニケーションをとる傾向が見られます。

第2段階のモンテッソーリ環境

第2段階のモンテッソーリ環境はエレメンタリーと呼ばれています。
エレメンタリーは6歳から12歳を対象にした学校で、日本でもいくつかのモンテッソーリ小学校が開設されています。

宇宙教育 Cosmic Education

モンテッソーリ教育のエレメンタリーでとても特徴的なコンセプトのひとつがこの宇宙教育です。広範囲の様々なことに興味を持つというこの時期の子どもたちの特性に従って、宇宙、地球、大陸、それぞれの国に住む人種など大きな視点から学んでいくため、地球人としての意識が生まれ、平和教育へと繋がっていきます。

「3~6歳の子どもには世界へのカギkey to the worldを与え、6~12歳の子どもたちには宇宙へのカギkey to the cosmicを与えなさい」

グループ活動 Group Work

エレメンタリーで使われる教具のほとんどはマリオ・モンテッソーリと、カミロ・グラッツィーニによって作られたものです。クラスの中の教具は主に、6歳から9歳ごろまでの子どもが興味を持って使えるものが設置されているため、10歳頃になると徐々に興味は無くなっていきます。

教具を卒業した子どもたちは、本やコンピュータを使ってリサーチをするなど、学ぶ方法に変化が見られるようになってきます。仲間と一緒に活動することを好むため、まずはThe great five lessonsと呼ばれる一斉授業を行い、その後はそれぞれの興味関心に沿ってグループで活動していきます。

ゴーイングアウト Going Out

日本の学校で行われる課外活動や社会見学のようなものをゴーイングアウトと呼んでいます。ただし、モンテッソーリ教育の学校では、先生はあくまでコーディネーターという立場をとっており、子どもたち自身が計画を立てて外部の博物館や美術館に行きます。

遠足のようにただ外に出かけるのではなく、グループ活動の中で出てきた疑問点を明らかにするためのリサーチをするといった目的意識を持った課外活動になっています。

ゴーイングアウトの学びを通して責任感や自立心を育むことができます。

5つの偉大なレッスン The great five lessons

モンテッソーリ小学校に欠かせないのが5つの偉大なレッスン The great five lessonsです。進化の概念、創造的思考、探求、実験、科学、世界での自分たちの位置や生命の循環など、様々な学びの基礎となる知識を習得します。これら5つの講義・物語は、子どもたちの知的好奇心の広がりの基盤となります。

  1. 宇宙の創造
  2. 生命の始まり
  3. 人類の始まり
  4. 言語の物語
  5. 数の物語

5つの偉大なレッスンについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

第2段階の子どもへの対応

この時期の子どもは非常に多くの疑問を持ち、その答えを常に探しているため、物事を教えてくれる存在を必要としています。そのため、教師はたくさんの知識を持っているべきであり、それをわかりやすく伝えたり、リサーチの方法を提案したりする力を養う必要があります。

また、ゴーイングアウトのように子どもたちの興味に従って自由に活動させる機会が増えるため、ある程度の枠組みをつくり、実施の可否を判断し導く必要も出てきます。

子どもたちの知りたいという気持ちをつぶすことなく、むしろ奨励していくことが大人の役割といえます。

このとき、「こうやりなさい!」と決めつけるのではなく、教師自身が色々な意見を引き出してあげられるよう、ガイドやアシスタントとなって、オープンな心で意見を聞き出すような雰囲気・環境作りが求められます。

大きな個性を育んで行く時期でもあるため、安心して、自分の意見を躊躇なく表現できる場を提供しましょう。

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